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開業準備

うなぎ屋の物件は、家賃より先に「煙の逃げ道」を見る

2026.11.05

漆の器に盛られたうなぎの蒲焼と小鉢が並ぶ和食の膳
開業準備

先月、加盟を検討中の方と一緒に物件を3件まわりました。帰りの車で「どれが一番よかったですか」と聞かれて、私が答えたのは家賃でも立地でもなく、「煙をどこに逃がせるか、ですね」でした。少し拍子抜けされた顔をされたので、今日はその話を書いておきます。

先に結論:うなぎ屋の物件は「排気」で9割決まる

うなぎ店の物件選びで、私がいちばん最初に確認するのは排気ダクトをどこまで通せるかです。駅からの距離や坪数は、そのあとで考えても間に合います。

理由は単純で、蒲焼は煙が多いから。タレが炭や熱源に落ちて上がる煙は、ラーメンや定食とは量も匂いの強さも違います。この煙を建物の外、それも近隣に迷惑のかからない位置まで運べない物件は、どれだけ条件がよくても候補から外すしかありません。

逆に言うと、ここさえ通れば、多少駅から遠くても「わざわざ食べに来る店」として成立しやすいのがうなぎの面白いところです。客単価が2,500〜3,500円あたりの業態なので、ふらっと寄る人より、目的を持って来る人が中心になります。

駅前15坪で、私が即決しかけた話

看板が多く並ぶ雑居ビルの外観
こういう上に住居や事務所が載っているビルほど、ダクトの話で止まりがち。

偉そうに書いていますが、私自身、FC開発の仕事を始めたばかりの頃に一度やらかしています。

駅から徒歩2分、1階路面、15坪。家賃も想定内で、内見した瞬間に「ここだ」と思いました。オーナー候補の方も乗り気で、その場で申込の段取りまで話を進めてしまったんです。

ところが設備業者さんに見てもらったら、上の階が住居で、ダクトを屋上まで立ち上げるルートがない。外壁に這わせる案も管理組合の承認が下りず、結局見送りになりました。申込から見送りが決まるまで約1か月半。開業を急いでいたオーナー候補の方には、本当に申し訳ないことをしました。

あれ以来、内見では間取りより先に天井と屋上を見るようにしています。

「重飲食可」と書いてあっても安心しない 募集図面に「重飲食可」とあっても、それは「貸主が断らない」という意味でしかないことが多いです。実際にダクトが通るか、近隣から苦情が出ない排気位置を取れるかは別の話なので、申込の前に必ず設備面を確認してください。

内見でまず見ている場所

全部を完璧にチェックする必要はないと思っています。私が毎回、最初の10分で見ているのは次のあたりだけです。ここで引っかかったら、細かい話に進む前に一度立ち止まります。

最初の10分で見ること
  • 上の階に何が入っているか(住居か、事務所か、空きか)
  • 屋上までダクトを立ち上げられるルートがあるか
  • 排気口の近くに隣家の窓やベランダがないか
  • ガスと電気の容量が、焼き台を置いても足りそうか
  • 管理規約や契約書で、業種の制限がかかっていないか

ガス・電気の容量は、正直なところ素人目では判断しきれません。なので「足りなさそうな気配があるか」だけ見て、あとは業者さんに任せています。上の階と屋上ルートは、自分の目で見ておくと話が早いです。

煙は、悪者ばかりでもない

網の上でうなぎを焼く料理人の手元
この匂いが通りに流れると、夕方の人の足がちょっと止まる。

ここまで煙を厄介者のように書いてきましたが、うなぎ屋にとって焼ける匂いは、ある意味いちばんの看板です。店の前を通った人が匂いにつられて振り返る、というのは本当によくあります。

だから私は、排気を「とにかく遠くへ捨てる」より、「近隣の迷惑にならない範囲で、店前には少しだけ香らせる」くらいのバランスが好きです。このあたりは物件ごとに条件が違うので、人によって、店によって答えが変わると思います。住宅街の真ん中なら、香らせるより徹底的に抑えたほうがいい場合もあります。

合わないケースもある

テイクアウトやお弁当を中心にしたい方だと、焼き場の規模や考え方そのものが変わってきます。店内で焼かない運営を検討するケースもあるので、「排気が通らないから即アウト」とは限りません。そこは個別に事情を聞いてから判断しています。

もう一つ、ショッピングモールなどの商業施設に入る場合は、施設側の排気設備や規定が先に決まっていることが多く、この記事で書いたことの半分くらいは当てはまらないかもしれません。

木のトレイに並んだうなぎ料理と小鉢
店内でゆっくり食べてもらうか、
テーブルに並ぶうなぎ料理と和食の品々
持ち帰りも厚くするかで、焼き場の考え方は変わります。

物件の話は、どうしても「家賃」と「立地」に目が行きます。それ自体は間違っていません。ただ、うなぎに限っては、その2つを見る前に天井を一度見上げてほしい。

あの駅前15坪の物件、いまはカフェになっています。前を通るたびに、ちょっとだけ胸が痛みます。

KIF Food's FC開発担当
うま鰻のフランチャイズ開発を担当。加盟を検討される方と一緒に物件を見てまわり、開業までの段取りを伴走しています。家賃より先に天井を見上げる癖がついてしまい、私用で入る飲食店でもつい排気口を探してしまいます。物件のことでも、それ以前の「そもそも自分にできるのか」でも、無料相談でお気軽にどうぞ。

画像提供:Unsplash

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